「つみたてNISAでどの商品を買おうかなー」と、とりあえず信託報酬が安い商品を探していると、以下の記事を見つけました。

この記事を見ていると、信託報酬と実質コストが比較されています。
その中で、「信託報酬は一番安いが、実質コストは他の商品より高い」という商品がいくつかありました。
この結果を見ると、投資信託を選ぶときには「信託報酬だけでなく、実質コストも確認した方が良い」ということが分かります。
実質コストとは、投資信託を保持する上で実際にかかるコストです。
しかし、この実質コストとは具体的にはどのようなものなのでしょうか?なぜ信託報酬のように具体的な数字が公表されないのでしょうか?
また、そもそも投資信託にはどのようなコストの種類があるのでしょうか?今回はこれらの投資信託に関する”コスト”についてまとめました。
投資信託とは
そもそも、投資信託(ファンド)とは、投資家からお金を集めて資産運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。
株式と違って500円などの少額でも購入が可能であること、運用は専門家に任せられることから、投資初心者でも始めやすいのが特徴です。
投資信託は3つの会社で運営している
続いて、投資信託の運営に関わる3つの会社の役割についてご説明します。これら3つの会社の役割を理解することは、投資信託のコストを理解する上で重要となります。
販売会社の役割
販売会社とは、投資信託を投資家に販売する会社です。投資信託の販売会社は野村証券やSBI証券などの証券会社が有名ですが、銀行、郵便局なども販売会社となります。
販売会社は、投資家に対して投資信託の売買に加えて、投資信託の運用報告書や目論見書の開示など、各種情報を提供する役割を担っています。
参考 投資信託の仕組み
運用会社の役割
運用会社は、投資信託(ファンド)の資金運用の方針を決め、管理会社に対して株や債券の購入などの指示する会社です。
投資信託は運用のプロである運用会社によって作られます。運用会社はファンドマネージャーとも呼ばれます。
運用会社の具体的な会社としては、「野村アセットマネジメント」や「大和証券投資信託委託」などが有名です。
運用会社の会社名は普段の生活では聞き慣れないと思います。ただ、「野村アセットマネジメント」の資産総額は約25兆円であり、これはフィンランドの名目GDPと同程度の規模となります。
運用会社は非常に大きな資産を動かしている会社であることがわかります。
管理会社
管理会社は、運用会社の指示に従って株式や債券などの売買を行い、資産管理を行う会社です。
主に信託銀行が管理会社となっており、信託銀行では「三井住友信託銀行株式会社」や「三菱UFJ信託銀行株式会社」などが有名です。
管理会社(信託銀行)は、投資家から集めた資産を管理する、いわゆる金庫番のようなイメージです。
投資信託のコストの種類
投資信託に関するコストの種類は以下のようになっています。
- 買付手数料、売却手数料
- 信託財産留保額
- 信託報酬
- 監査費用
- その他費用
信託報酬以外にも色々なコストがあることがわかります。以降、それぞれのコストの詳細についてご説明していきます。
買付手数料、売却手数料
投資信託を売買する時に「投資家が直接、販売会社に対して支払う手数料」です。
買付手数料は無料の投資信託を選ぶべき
投資信託を購入する度にかかる費用であるため、投資信託を定期的に購入する場合は無料でないと、かなりコストがかかってきます。
買付手数料が無料の投資信託はノーロードと呼ばれます。つみたてNISAで購入できる投資信託は買付手数料が無料(ノーロード)であることが条件となっています。
売却手数料は無料とするケースが多い
投資信託を売却する時に「投資家が直接、販売会社に対して支払う手数料」です。解約手数料とも呼ばれます。
ただ、売却手数料を取る投資信託は比較的少ないです。その代わりに次に説明する「信託財産留保額」を取る投資信託が多いです。
信託財産留保額
投資信託を売却する時に、「投資信託を解約するときに徴収される費用」です。
この信託財産留保額は販売会社に対して支払うのではなく、投資信託に残す費用です。
信託財産留保額が必要となる理由
一人の投資家が投資信託を解約すると、その投資家に対して現金を支払う必要があります。
そのために投資信託では株式や債券などを売却して現金化し、投資家に渡す必要があります。その際、売却の手数料や売りたくない時に売ることによって損をするなど、様々な費用がかかります。
それでは投資信託を持ち続けている人が負担すると、持ち続ける人が損をしてしまいます。そこで、解約した人からこれらの費用を「信託財産留保額」という名目で徴収するわけです。
ざっくり言うと、解約時のペナルティーって感じですね。
信託報酬
信託報酬とは、投資信託を運用するための経費として投資信託から差し引かれる費用のことです。投資家が直接販売会社に支払うのではなく、投資信託から間接的に差し引かれます。
また、信託報酬は年率で表示されますが、「純資産総額に対して何%」という形で毎日差し引かれます。
なお、信託報酬は「販売会社」と「運用会社」と「管理会社」の3つの会社で分配され、一番報酬が多いのは運用会社です。
監査費用
公募投資信託は、金融商品取引法により監査法人等の監査を受けることが義務付けられています。その監査のために監査法人等に支払う費用が監査費用です。
投資信託の監査では、投資信託の会計・経理が法令基準に沿っているかを評価し、監査報告書が作成されます。監査報告書は投資信託の目論見書に含まれています。
監査報告書とは以下のようなものです。
引用 ファンドの監査とは?
その他費用
その他費用には、
- 有価証券売買手数料(有価証券等の売買時に取引した証券会社等に支払う手数料)
- 信託事務の諸費用(信託事務の処理に要する諸費用、信託財産に関する租税)
- 先物取引やオプション取引等で必要となる費用
- 資産を外国で保管する場合の費用
- 借入金の利息
などがあります。
これらの費用は投資信託の種類によって、全くかからない場合もあります。また、運用状況により費用が変動するものです。
例えば、「有価証券売買手数料」は有価証券を売買する回数が少ない投資信託の場合はほとんど手数料はかかりません。
また、先物取引やオプション取引を行わない投資信託の場合も、それらの取引にかかる費用は不要です。
実質コストは目論見書と運用報告書で確認できる
投資信託に関わるコストの種類は「目論見書」で確認できます。実質コストは「運用報告書」で確認することができます。
今回は、「楽天グローバル・バランス(安定型)」を例にして実コストを確認したいと思います。
投資信託のコストの種類を目論見書で確認する方法
まず、「楽天グローバル・バランス(安定型)」のサイトから「目論見書」を確認します。コストの種類は「目論見書」の後半に「ファンドの費用・税金」の章に記載されております。
ここで、購入時手数料や信託報酬等は、はっきりと手数料の割合(%) が記載されています。
一方で、その他の費用欄に記載されている以下の費用は割合(%)が何も記載されていません。
- 信託事務の処理に要する諸費用
- 投資信託財産にかかる監査報酬
- 法定書類の作成・印刷・交付にかかる費用
- 組入有価証券の売買の際に発生する売買委託手数料
- 外貨建資産の保管に要する費用
また、表の中に以下のように割合を表示できない旨も記載されています。
これらの費用・手数料等については、運用状況により変動するものであり、事前に料率や上限額を表示することができません。
つまり、一部の手数料については投資信託の運用状況次第で変動するため、一律の割合では掲載できないというわけです。
実際にどれだけの手数料がかかったかについては運用報告書で確認します。
投資信託の実質コストを運用報告書から確認する方法
投資信託の実質コストは、投資信託の運用報告書から確認できます。
費用の明細として以下4種類のコストが確認できます。
- 信託報酬(125円)
- 売買委託手数料(1円)
- 有価証券取引税(0円)
- その他費用(86円)
この投資信託の例では、その他費用の割合が手数料の約4割を占めています。この割合が高いと感じるか、安いと感じるかは人次第です。
ただ、投資信託のコストを確認する時は信託報酬だけでなく、その他の費用も確認する必要があるというわけです。
つまり、投資信託を選ぶときには過去の運用報告書を確認し、実質コストがどの程度になるかを事前に確認した方が安全です。
まとめ
投資信託のコストについてまとめました。
投資信託には株の売買時の委託手数料や信託事務の手数料など、投資信託の運用状況次第で変動する費用(コスト)もあります。
これらのコストは、信託報酬などと違って、事前に割合を公表できない数字です。
そのため、投資信託を選ぶ際は実質コストを運用報告書で確認してから購入するようにしましょう。
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