住宅ローンの金利タイプには、固定金利と変動金利があります。固定金利は金利が変わらず、変動金利は金利が変わるというのは、誰もが知っていることと思います。
しかし、変動金利は金利が変わってすぐに返済額が変わるわけではなく、「返済額は5年ごとに見直し」や「返済額は最大1.25倍まで」など、意外と複雑な仕組みがあります。
今回はこれらの変動金利の仕組みについてご紹介したいと思います。
また、変動金利を選ぶメリットとして金利が安い利用した賢い返済方法やデメリットの未払い利息についても紹介したいと思います。
変動金利って何?どんな仕組み?と考えている方の参考になれば幸いです。
変動金利とは?
変動金利とは、半年に1回金利が見直される金利のことです。一方で金利が借入時から変わらないのが固定金利です。
金利は半年に1回見直し(4月と10月)
変動金利の見直しは4月と10月の年2回行われます。4月と10月時点の金利に応じて、変動金利の値が決まります。
変動金利は短期プライムレートの指標が基準となる
変動金利は短期プライムレートという指標を基準として数値が決まります。
短期プライムレートとは金融機関が優良企業向けに定めた短い期間での貸し出し金利のことです。
「短プラ」とも呼ばれ、金融機関が優良企業向け(業績が良い、財務状況が良いなど、融資する上で問題がない企業)に対して、短期(1年以内の期間)で貸し出す時に適用する最優遇貸出金利(プライムレート)のことをいいます。
4月と10月時点で短期プライムレートが下がっていれば変動金利は下がり、上がっていれば変動金利は上がるとなります。
なお、過去の短期プライムレートの推移については日本銀行からも公表されています。
参考 長・短期プライムレート(主要行)の推移 2001年以降
上記URLからわかるように、変動金利の値は2009年から変わっていません。変動していない要因や今後変動するかについてはこちらのサイトの記事が参考になります。
変動金利は借り手にリスクがある仕組みだから安い
一般的に、変動金利は金利が変動する反面、固定金利と比べて金利が安いです。
その理由は、変動金利は借り手が金利上昇リスクを受ける仕組みだからです。金利が上昇しても貸し手側(金融機関)は上昇した金利を借り手に押し付けるだけでなので、金融機関側には金利上昇リスクがありません。
そのため、変動金利はどの金融機関でも固定金利よりも安く設定されています。
ただ、借り手が金利上昇リスクをそのまま受けると破綻する人が増えてしまうので、借り手を守るために変動金利には「5年ルール」と「1.25倍ルール」の2つの仕組みが用意されています。
変動金利の仕組み
借り手を守る「5年ルール」と「1.25倍ルール」の2つの仕組みについてご紹介します。
返済額は5年ごとに変わる
変動金利は半年ごとに見直しがされますが、実際の返済額は5年ごとに変わる仕組みになっています。(5年ルール)
返済額の見直しを5年ごとにする仕組みにより、ローンを組んだ人が急に支払えなくなるということを防いでいます。
ただし、返済額は変わりませんが、返済額の中の元金と利息の割合は変わります。返済額が変わらないので安心してしまうと、意外と元金が減っていないことにビックリしてしまうため、しっかり仕組みを理解しておきましょう。
返済額は最大1.25倍までしか増えない
変動金利の場合は支払額が5年ごとに変わります。その際、1.25倍までしか返済額が増えないという仕組みがあります。(1.25倍ルール)
これもローンを組んだ人が急に支払えなくなるということを防ぐための仕組みです。
もちろん、1.25倍までしか増えないものの、返済が免除されるわけではありません。1.25倍以上の利息分は次の返済に回されますのでご注意ください。
参考 元利均等返済と元金均等返済の違いは?メリットとデメリットまとめ
変動金利を選択するメリット
変動金利を選ぶメリットはズバリ金利が安いです。変動金利のメリットはこの1点です。ただ、これが最も重要です。
実際に「フラット35などの仕組みを作っている住宅金融支援機構」が調査した結果によると、固定金利よりも変動金利の方が人気という結果になっています。
変動金利の安さを利用すると返済期間が短くできる
変動金利は固定金利と比べて金利が安いため、毎月の返済額が同じでも返済期間を短くすることが可能です。
- 変動金利(0.6%)→28年間でローン完済
- 固定金利(1.7%)→35年間でローン完済
上記の通り、毎月の返済額を同じにすると、変動金利は固定金利と比べて約7年も早くローンを完済することができます。
変動金利は2009年から金利が変わっていない
前述の通り、変動金利は2009年から金利が変わっていません。先のことはわかりませんが、現在の金融政策であるマイナス金利が続くうちは、金融機関も金利をあげるのは難しいと予想されます。
引用 住宅金融支援機構
最初の10年間は最大400万円の住宅ローン控除がある
さらに、ローンを借りた最初の10年間は住宅ローン減税があります。最初の10年間は最大で400万円も税金が安くなるため、その分を繰り上げ返済に回すというのも一つの作戦です。
参考 住宅ローン減税制度の概要
つまり、変動金利を短い返済期間で設定し、金利が上がってしまう前に住宅ローン減税なども利用しながらさっさと住宅ローンを払い切することが、変動金利を選んだ時の返済方法の一つとなります。
変動金利を選ぶデメリット(リスク)
半年ごとの適用金利を確認する必要がある
変動金利の場合、4月と10月の半年ごとに適用金利が変わります。そのため、4月と10月に適用される金利を確認し、5年後の返済額が変わらないかを気にする必要があります。
半年ごとに「金利上がっていないかな?」と確認するのは面倒ですよね。さらに、もし金利があがるとシミュレーションし直しが必要になるので、それも面倒です。
「いちいち金利を確認したくないし、シミュレーションもし直したくない」という方は固定金利の方があっているかもしれません。
未払い利息が発生する可能性がある
もし、金利が急激に上昇し、毎月の返済額よりも利息が大きくなると未払い利息が発生します。
未払い利息が発生すると、住宅ローンを返済していても利息分しか返済できておらず、元金が減っていない状態です。払っても払っても元金が減らないというのは怖いですよね。
変動金利にはこのような未払い利息が発生するリスクがあることを十分、理解しておく必要があります。
未払い利息の返済方法
未払い利息の返済方法は金融機関によって異なりますが、主に以下2つの方法があります。
- 一括で支払う
- 次の返済額に上乗せして支払う
ただ、ここで「次の返済額に上乗せして支払う」を選択した場合でも「1.25倍ルール」があるため、未払い利息が解消されない状態が続いてしまう可能性があります。
金融機関から住宅ローンを借りる場合は、未払い利息の返済方法についてもしっかり確認しましょう。
未払い利息は発生するのか?
未払い利息が発生するのは、0.6%の金利が4〜5%程度まであがらないと発生しません。
昔、発生したバブルのようなことが起きると、4〜5%以上に金利が上がるため、未払い利息が発生します。
しかし、日本政府も再びバブルを発生させてはいけないと意識しています。金融緩和やマイナス金利などの政策をうちつつ、バブルにならないよう、細心の注意を払うため金利が急激に上昇する可能性は低いと考えられます。
まとめ
変動金利の仕組みとメリット・デメリットについてご紹介しました。変動金利を選ぶのか固定金利を選ぶのかは、人それぞれだと思います。
単に金利が安いからという理由だけで変動金利を選択すると、未払い利息などが発生した時に取り返しのつかないことになってしまいます。
借入金が変動金利でしか借りれないという方は、まずは借入金の見直し(物件の見直し)からしたほうが良いです。
変動金利でも固定金利でも借りれるという状態で、どちらが良いかと考えた時に、「多少のリスクがあっても、金利が安い方が良い」という方は変動金利を選択するのが良いと思います。
以上、参考になれば幸いです。
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