住宅ローンの金利は変動金利か固定金利かによって総支払額が変わってくるため、どちらにするかを悩む方は多いと思います。
でも、金利以外に返済方法についても考えておいた方が良いです。返済方法は以下2種類があり、返済方法によって総返済額が変わってきます。
- 元利均等返済
- 元金均等返済
返済方法によって総返済額が変わるのに、なぜか銀行などでシミュレーションを行う場合はこちらが指定してなくても元利均等返済で計算されます。
なぜなら、元利均等返済の方が元金均等返済よりも利息が多いからです。つまり、銀行の利益が大きいというわけです。
私が実際に住宅ローンのシミュレーションを行った時、金利の説明はありましたが、元金均等返済と元利均等返済の2種類の返済方法があるという説明はありませんでした。
当然、元利均等返済にもメリットがあるため、一概に元利均等返済方法が悪いというわけではありません。
元利均等返済と元金均等返済のメリットとデメリットを理解して、自分にあった返済方法を選択した方が良いと思います。
そこで今回の記事では以下2点を中心にご説明します。
- 元利均等返済や元金均等返済とは何か?それぞれのメリットとデメリットは?
- どちらの返済方法にするかを決める時に考えるべきこと
この記事を読んで頂いた結果、「元利均等返済と元金均等返済の違い」を理解し、「ご自身のライフプランに合った返済方法」を選択する手助けになれば幸いです。
事前に知っておいて頂きたい知識
まず、先ほどご紹介した通り住宅ローンの返済方法には2種類あります。
- 元利均等返済
- 元金均等返済
2種類の返済方法を説明する図でよく用いられるのが以下2つです。
【元利均等返済の図】
【元金均等返済の図】
きっと普通の人はこの図をパっと見て分かるんだと思います。ただ、私が初めてこの図を見た時はさっぱり分かりませんでした。笑
まずはこの図の意味を理解していただくために、基本的な用語からおさらいしたいと思います。
元金とは何か?利息とは何か?
元金とは銀行などから借りたお金のことです。借入金と呼ばれたりもします。
利息とは借りたお金(元金)に対する手数料などのお金です。また、金利は元金に対する利息の割合を表します。
住宅ローンの金利は年利のこと
借りたお金(元金)に対する毎月の利息の割合を月利といい、年間の利息の割合を年利といいます。住宅ローンの金利は年利が表示されています。
まず、ここまでは大丈夫そうでしょうか。続いて元利均等返済と元金均等返済を説明していきます。
元利均等返済とは?元金均等返済とは?
元利均等返済とは?メリット、デメリットは?
毎月の支払額(元金+利息)を一定とする返済方法です。
一般的に銀行などのローンを貸す企業はこの元利均等返済を勧めます。その理由は、銀行にとっての利益=利息であり、元金均等返済に比べて元利均等返済の方が総返済額(利息)が多くなるためです。
毎月の支払額(元金+利息)が固定できるため、資金計画が立てやすくなる
同条件で元金均等返済と比較すると元金の減りが遅くなるため、総返済額(利息)が多くなる
なお、メリットで支払額が固定できるとしてますが、変動金利を選んだ場合は金利の変動に伴い支払額も変動しますのでご注意ください。
元金均等返済とは?メリット、デメリットは?
毎月の支払額のうち元金のみを一定とし、毎月の利息も支払う返済方法です。返済開始当初は利息が多いため、毎月の返済額が多くなります。
元利均等返済よりも元金の減少ペースが早いため、同じ返済期間であった場合は総返済額が少なくなる
返済開始当初の返済額が多い。(元金に対する利息が多いため)
元金均等返済と元利均等返済の違いとは?
元金均等返済と元利均等返済の違いについて、初めはかなり分かりづらいと思います。というわけでもう少し簡単な例を作成してみました。
元金均等返済 | 元利均等返済 | |
借入金 | 12万円 | |
返済回数 | 5回 | |
金利 | 12% | |
初回返済額 | 25,200 | 24,725 |
2回目返済額 | 24,960 | 24,725 |
3回目返済額 | 24,720 | 24,725 |
4回目返済額 | 24,480 | 24,725 |
5回目返済額 | 24,240 | 24,725 |
総返済額 | 123,600 | 123,624 |
元利均等返済は毎月の支払額が一定です。元利均等返済は元金均等返済と比べて元金の減りが少ないため、利息の支払額が多くなります。
それに対して、元金均等返済は元金の支払い額が一定です。また、初回返済は高くなりますが、徐々に毎月の支払額が減少するのが特徴です。
元金均等返済と元利均等返済の返済額の比較
元金均等返済と元利均等返済の返済シミュレーションを行った結果についてご紹介します。
元金均等返済 | 元利均等返済 | 差分 | |
借入金 | 3,000万円 | – | |
金利 | 1.5% | – | |
初回返済額 | 10.9万円 | 9.2万円 | 1.7万円 |
総利息額 | 789万円 | 857万円 | -68万円 |
総返済額 | 3,789万円 | 3,857万円 | -68万円 |
差額は約68万円です。返済方法だけでここまで差が出てしまいます。
さらに、借入金を5,000万円にあげた場合のシミュレーションがこちらです。
元金均等返済 | 元利均等返済 | 差分 | |
借入金 | 5,000万円 | – | |
金利 | 1.5% | – | |
初回返済額 | 18.1万円 | 15.3万円 | 2.8万円 |
総利息額 | 1,316万円 | 1,430万円 | -114万円 |
総返済額 | 6,316万円 | 6,430万円 | -114万円 |
差額は約114万円です。借入金があがると、差額がさらに大きくなることがわかります。
返済方法については慎重に考える必要があります。
返済方法を選択する際に考えるべきこと
元金均等返済にできるかは今後のライフプランを考える
ここまでの説明の通り、返済方法は総支払額の少ない元金均等返済が基本的に良いと思います。
ただ、デメリットである支払い開始当初の返済額が多いという点についてはしっかり考えておく必要があります。そこで、元金均等返済にできるかについては家庭の今後の収入、支出の増減(ライフプラン)を考えることが大事です。
例えば、今後10〜15年間は夫婦共働きで収入が多いとか、子供が小さいため支出も大きくないという方は「元金均等返済」を選択する方が良いかと思います。
ちなみに、元金均等返済を選択した場合、元利均等返済と同じ支払額になるのは大体15〜20年後です。
元金均等返済 | 元利均等返済 | |
借入金 | 3,000万円 | |
金利 | 1.5% | |
初回返済額 | 10.9万円/月 | 9.2万円/月 |
10年後返済額 | 9.8万円/月 | 9.2万円/月 |
16年後返済額 | 9.2万円/月 | 9.2万円/月 |
20年後返済額 | 8.8万円/月 | 9.2万円/月 |
30年後返済額 | 7.7万円/月 | 9.2万円/月 |
総返済額 | 3,789万円 | 3,857万円 |
15年経過するまでに子供を私立中学に行かせるから教育費がかかる等、住宅ローンの開始当初に支出が多くなるという方は元金均等返済は難しいと思います。
ご自身のライフプランから元金均等返済は難しいと感じた場合、元利均等返済をおすすめします。
繰上げ返済には手間と手数料がかかる
元利均等返済を選択した場合でも、余裕が出た時に繰上げ返済を行うことで元金均等返済に近い総支払額にすることも可能です。
ただ、この繰り上げ返済には手間と手数料がかかることを意識しておいてください。
どのような手間がかかるか、手数料がいくら必要かについては金融機関によって異なるため、住宅ローンを借りる予定の金融機関に確認した方が良いです。
また、フラット35のように手数料が無料のものもあります。ただ手数料が無料でも「1ヶ月前までに返済中の金融機関に申し込む」等のルールがありますのでご注意ください。
返済方法に関係なくボーナス払いは使わない方が良い
月々の返済額を減らすために、ボーナス払いを使いたくなる気持ちはわかりますが、ボーナス払いは基本的に使わない方が良いです。
ボーナスを前提にした返済計画は少し無理をしている可能性があります。また、会社にもよると思いますが、会社のボーナスは変動するリスクが大きいです。
また、「ボーナス払いあり」にした場合は総支払額が若干多くなります。これは元金均等返済でも元利均等返済でもどちらの場合でも同じです。
以下、元利均等返済でボーナス払いの「あり・なし」でのシミュレーション結果です。
条件:借入金3,000万円、借入期間30年、金利1.5%(固定金利)、ボーナス払い600万円
ボーナス払いなし | ボーナス払いあり | |
毎月の返済額 | 10.4万円 | 8.3万円 |
ボーナス払い | – | 12.4万円 |
総支払額 | 3,727万円 | 3,729万円 |
以下、元金均等返済でボーナス払いの「あり・なし」でのシミュレーション結果です。
条件:借入金3,000万円、借入期間30年、金利1.5%(固定金利)、ボーナス払い600万円
ボーナス払いなし | ボーナス払いあり | |
毎月の返済額 | 12.1万円 | 9.7万円 |
ボーナス払い | – | 13.8万円 |
総支払額 | 3,676万円 | 3,678万円 |
差額は約2万円です。30年間で2万円なので微々たるものかもしれませんが一応知っておいた方がお得かなと。笑
まとめ
返済方法について、基本的には総返済額が少ない元金均等返済がおすすめです。ただ、ご家庭のライフプラン次第では元利均等返済にするのもありだと思います。
元利均等返済を選択しておき、余裕が出て来れば繰上げ返済を行うのも良いと思います。ただその場合は繰上げ返済の手間や手数料について事前に確認しておいた方が良いです。
なお、元利均等返済でも元金均等返済でも「ボーナス払いなし」とし、無理のない返済計画にする方が良いと思います。
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